オジロワシ(White-tailed Eagle)

SDGs

北ヨーロッパ最大のワシ「オジロワシ」は、日本では国の天然記念物に指定されています。 ヨーロッパ、西アジア、東アジアに広く分布しており、極東における繁殖地はカムチャツカ半島、サハリン、北海道等です。北海道と本州北部で越冬するオジロワシは、約550~850羽(オジロワシ・オオワシ合同調査グループおよび保護増殖事業調査)。種としての総個体数は約20,300~39,600羽(IUCN, 2013)と推定され、極東全体の総個体数は不明となっています。環境省のカテゴリーでは、絶滅危惧Ⅱ類に分類され、絶滅の危機が増大している鳥です。

オジロワシ

オジロワシは、全長約69㎝~92㎝、翼開長200㎝~245㎝あり、オスよりもメスの方が大きい鳥です。色は暗褐色で、頭は淡く、くちばしは黄色で、尾は短く白い。幼体は均一な暗褐色で、成鳥の羽毛に達するまでに5〜6年、白い尾を得るまでにさらに2年かかります。越冬期には、ロシアで越夏したと考えられる多数のオジロワシが北海道に渡来し、本州北部から中部、稀に九州、琉球列島などにも広く分布しています。「山本山のおばあちゃん」が越冬する湖北地方にも飛来しています。北海道の道東地方では、オジロワシとオオワシが同じ木にとまっている姿もよく見かけます。

海岸や湖沼周辺、河川流域の大木に巣を作り、海鳥類、スケトウダラ等の海産魚類を食べます。餌が不足する厳冬期は、漁港周辺や氷下待網漁の行われる凍った湖に集結し、漁船が捨てる雑魚を餌にしています。現在、北海道の営巣つがい数は増加していますが、繁殖成功率は低下しています。

風連湖のオジロワシ

嘴の黄色が美しいオジロワシ

保護上の問題

風車衝突、ハンターが狩猟したエゾジカ等を食べたことによる鉛中毒(北海道では、鉛弾の使用に加え、所持についても平成26年10月1日から禁止)、感電事故、森林伐採や道路開発による営巣地の減少、事故死したエゾシカ等を路上や線路上で採食することによる衝突死など解決すべき問題が数多くあります。環境省では、越冬状況調査、餌資源調査、GPSロガーによる行動追跡調査、事故対策等を行っています。

上空から獲物を探すオジロワシ

感電事故を防ぐために

2022年1月に北海道釧路にある猛禽類医学研究所が行っているバックヤードツアーに参加しました。そこで感電対策や終生飼育について知りました。

猛禽類は見晴らしの良い高い所に止まる習性があります。北海道では、高い樹木のほか、街灯や電柱にオジロワシやオオワシがとまっている姿をよく見かけます。そのため、電柱や鉄塔などに止まろうとした時、または止まっていて飛び立とうとした時に、翼などの体の一部が電気の通る部分と接触・接近することで感電することがあるそうです。感電してしまったオジロワシやオオワシは、羽や足に火傷を負い、治療しても羽が元に戻らず曲がったままや羽の欠損などのために飛べず、野生に帰れない鳥もいるそうです。今までにシマフクロウ、クマタカ、オジロワシ、オオワシなどの感電事故が起こっています。

感電事故の対策として電力会社などでは、通電部分への絶縁体の取り付けや電柱に猛禽類が止まらないようにする器具の設置、電柱の上部に安全な止まり木を設ける事で感電を防止する対策を行っています。ただ新設の電柱や鉄塔には設置がしやすいものの古い電柱や送電鉄塔には設置できていないのが現状だそうです。猛禽類医学研究所では、感電事故の発生した箇所や発生する可能性のある場所において、より効果のある対策ができるよう感電事故の分析を行い、電力会社などと協議を行いながら感電事故防止に取り組んでいるそうです。

猛禽類医学研究所(Institute for Raptor Biomedicine Japan)は、保全医学をテーマとして活動する獣医療機関です。希少猛禽類の救護活動・死因究明、調査・研究、終生個体飼育等様々な活動を行っています。終生飼育している鳥たち(オジロワシやオオワシ等)は、怪我をした鳥のための輸血ドナーになり、新しい治療法、感電や交通事故を防ぐための器具の開発や有効性の検証のために活躍しています。

http://www.irbj.net/