マナティー

SDGs

 大きな真ん丸な体とゾウのような皮膚をもち、ジュゴンによく似た大型の水生哺乳類がマナティーです。

マナティーは大きく分けて、アメリカマナティ―、アフリカマナティー、アマゾンマナティーの3種類あります。いずれも絶滅危惧種Ⅱ類(VU)です。アメリカのフロリダでは、冬になると寒さが苦手なマナティーが、水温が安定しているきれいな湧き水のある川に集まります。(11月から3月までの間に、クリスタルリバーの保護区に集まるマナティーは最大約600頭です。)マナティーと一緒に泳ぐことが可能なところもあり、観光客に人気のある観光地になっています。

フロリダのマナティー

外観

  • スプーンのような形をした尾があり、足ヒレに爪があります。
  • 体長は約3m、体重は約363~544㎏。
  • 皮膚は灰色がかった茶色。
  • 平均寿命は約60年といわれています。

クリスタルリバーのマナティー。皮膚はゾウのような感じで、口と鼻の周辺にはひげが生えています。

生態

浅く、流れの緩やかな川、沿岸部、汽水域、運河、湾に生息しています。海藻やアマモなどの水生植物を好んで食べます。マナティーは渡り種で水路や海岸線に沿って移動し、1年の間に数百km移動することがあります。

アメリカマナティ―

かつてアメリカの大西洋とメキシコ湾沿岸部、カリブ海全域、ブラジルの大西洋沿岸部に生息していましたが、狩猟、開発による生息地の分断化と喪失等により、生息地域から姿を消しました。アメリカマナティ―の狩猟は、1900年代初頭まで行われ、グアドループ諸島や小アンティル諸島では見られなくなりました。

アメリカマナティ―は、アメリカでは絶滅危惧種法と海洋哺乳類保護法の下で保護されています。現在の分布は以下のとおりです。

アメリカマナティー分布図
Map of the West Indian manatee’s range. Jane Cooke, USFWS.

米国南東部、メキシコ東部、グアテマラ、ベリーズ、ホンジュラス、コスタリカ、パナマ、ニカラグア、コロンビア、ベネズエラ、ガイアナ、スリナム、フレンチギアナ、ブラジル、トリニダードトバゴ、ジャマイカ、キューバ、ハイチ、ドミニカ共和国、プエルトリコ、バハマで発見されています。

フロリダのアメリカマナティ―は、一年中フロリダで見られます。一般的にマナティーは20℃以下の気温に長時間耐えることが出来ません。冬の間は、温かい湧き水や発電所の排水溝からでる温水に依存するため、フロリダ半島に集中します。アメリカマナティ―は少なくとも13,000頭いると推定され、アメリカ南東部とプエルトリコでは推定6,500頭以上、フロリダでは約6,300頭以上いると推定されています。ブルースプリング州立公園(フロリダ州)、ハウローバー運河マナティービューイングエリア(フロリダ州)、スリーシスターズスプリングス(フロリダ州)でアメリカマナティ―を見ることが出来ます。

マナティーの死因は、寒冷ストレス、肺炎等の病気の他、人間に関連したものも多くあります。その多くは船舶との衝突です。アメリカ国内では、マナティーへの衝突を減らすために、マナティー保護地域を指定し、船舶の減速や回避を促す看板を設置して対策をしているところもあります。

親子で泳ぐフロリダマナティー

アフリカマナティー

アフリカマナティーは、世界で最も絶滅の危機に瀕しており、最も研究されていないマナティー種といわれています。 生息地はアフリカの21か国(アンゴラ、ベナン、カメルーン、チャド、コンゴ、コンゴ民主共和国、コートジボワール、赤道ギニア、ガボン、ガンビア、ガーナ、ギニア、ギニアビサウ、リベリア、マリ、モーリタニア、ニジェール、ナイジェリア、セネガル、シエラレオネ、トーゴ)と広範囲に及びます。

アフリカには推定10,000頭未満のマナティーがいます。分布は、以下のとおりです(オレンジ色部分)。


アフリカマナティー分布図
The IUCN Red List of Threatened Species™

貧困地域が多いアフリカでは、アフリカマナティーは食べるために狩られます。ただし、ナイジェリア、トーゴ、コートジボワールなどの特定の国では、伝統的な薬や儀式のためにアフリカマナティーの皮膚、骨、油が使用されています。またアフリカマナティーは、水族館に輸出されたりしています。

最近では、水力発電や農業用ダム、干ばつなどによる生息地の喪失や薪用のマングローブの伐採、農業開発のための湿地の破壊、沿岸開発によってアフリカマナティーの生息地は減少しています。

アマゾンマナティー

アマゾンマナティーは、南アメリカ北部に生息し、アマゾン盆地の固有種です。生息地域はアマゾン川の支流を介して、ブラジル、コロンビア、エクアドル、ペルーの推定700万平方キロメートル以上に及んでいます。そのため、個体数を特定する方法が確立されておらず正確な個体数は不明です。

ブラジル、コロンビア、エクアドル、ペルーなど生息が確認されている国では、法律によりアマゾンマナティーは保護されています。しかし、狩猟(保護区内の狩猟も含む)やボートとの衝突、漁具に絡まるなどの事故も多く、法律が守られていないのが現状です。

ブラジルなど一部の地域では、保護活動と再導入、地元の意識の向上などで、アマゾンマナティーが増加しているところもありますが、全体的な数は減少傾向です。分布は以下のとおりです。

アマゾンマナティー分布図
The IUCN Red List of Threatened Species™

SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」は、生物多様性の保全に関係しています。日本企業の取組では、伊藤忠商事が、2016年から3年間で1,500万円の支援をブラジルの国立研究機関「国立アマゾン研究所(INPA)」と京都大学野生動物研究センターが進める「アマゾンマナティーの野生復帰支援事業」(マナティー里帰りプロジェクト)に行っていたことがあります。

マナティーに関する詳細は、以下のHPをご覧ください。

https://www.fws.gov/southeast/wildlife/mammals/manatee/

https://www.fws.gov/refuge/Crystal_River/wildlife_and_habitat/Florida_Manatee.html

https://www.iucnredlist.org/