森林とSDGs

SDGs

森林は持続可能な社会の実現のために重要な役割を担っています。

世界の陸地面積の約30%を占め、そこには陸域の生物種の約80%が生息し、生物多様性の保全に大きく貢献しています。さらに、森林は土壌を保全し、水を育み、炭素を貯蔵します。しかし、世界の森林は、熱帯林等を中心に農地への転用等を原因として減少・劣化を続けており、森林の保全が世界中で課題となっています。また、開発途上国を始めとする地域では、森林減少・劣化は貧困問題等と密接な関係にあり、持続可能な森林経営を推進することは、人々の生活に関わるSDGsの目標と密接に関連しています。

近年の森林火災

2019年9月にオーストラリアの南東部ニューサウスウェールズ州やビクトリア州で大規模な森林火災が発生しました。コアラが火傷を負った映像が世界中に流れ、約3万匹のコアラが死んだとも言われています(2020年2月鎮火)。ブラジルのアマゾン熱帯雨林では毎年数十万件の森林火災が発生し、その多くは農作や放牧のために土地を切り開こうとした人間が放った火が原因で起きたものとされています。またアメリカのカリフォルニア州では、2020年1月以降に8,200件余りの火災が発生し、2020年9月時点で約16,187平方キロメートルが焼失したといいます。サンフランシスコの街がオレンジ色になり、火が強風にあおられ西海岸の山林、シアトル近郊の山林にまで延焼し、シアトルの街が煙で覆われてしまったという災害につながりました。この森林火災は干ばつと熱波が原因と言われていますが、特定には至っていません。日本でも毎年、森林火災が発生していますが、2021年2月に発生した栃木県足利市の森林火災が記憶に新しいと思います。

世界の森林    

以下のデータは、世界森林資源評価(FRA)2020年メインレポートより抜粋したものです。

世界の森林面積は、1990-2020年の30年間で1億7800万ha(日本の国土面積の約5倍)が減少しました。地域別の森林面積はヨーロッパ(ロシアを含む)が25%を占め、南米21%、北米・中米19%、アフリカ16%、アジア15%、オセアニア5%です。全森林の半分以上(54%)は、ロシア、ブラジル、カナダ、アメリカ、中国にあります。

1990年以降の森林面積の純減速度は、年平均784万ha(1990-2000)、517万ha(2000-2010)、474万ha(2010-2020)と減速しつつあります。森林面積の純減速度が鈍化した最大の要因は、植林や森林の自然拡大などにより一部の地域(主に中国とオーストラリア)で森林が増加したことによります。2015年から2020年において森林減少面積が最も大きかったのは、アフリカ(年平均441万ha)、続いて南米(296万ha)、アジア(224万ha)となっています。

世界における人工林面積は2億9400万haであり、森林全体の7%を占めています。地域別にみると、アジアは人工林の面積・割合ともに最大(1億3500万ha、22%)であり、アフリカおよび南米が最小(2%)、ヨーロッパ(ロシアを除く)が30%となります。2010年から2020年における人工林面積の増加の大部分をアジアが占めており、特に中国では年平均114万haの人工林が増加しています。

FRA2020では、管理経営目的を、「生産(木材や繊維、バイオエネルギーや特用林産物等の生産)」、「水土保全」、「生物多様性保全」、「社会的サービス(レクリエーション、観光、教育、研究、文化的・宗教的な場所の保全等)」、「複数利用」、「その他」の6つに大別しています。世界全体で最も割合の高い森林の管理目的は「生産」であり、世界の森林面積の28%を占めています。これに複数利用(18%)、水土保全(10%)、生物多様性保全(10%)、社会的サービス(5%)、その他(5%)が続きます。

世界では、森林面積の54%である20億ha以上もの森林が管理経営のための計画を有していますが、地域によって差が見られます。また管理経営のための計画を有する森林面積の半分近くがヨーロッパ(特にロシア)に分布しています。

森林を管理していく中で、世界には主に2つの国際認証組織があります。PEFC(Programme for the Endorsement of Forest Certification Scheme)とFSC(Forest Stwardship Council)です。PEFCでは国際的な基準として各国の森林認証プログラムを承認しています。世界の森林面積のうち、2019年のFSCによる認証面積は2億ha、PEFCによる認証面積は3億1900万haであり、重複して認証されている森林面積を除いた世界の森林認証面積は4億2600万haあります。

世界の森林は減少を続けており、森林減少を反転させることは重要な課題となっています。森林の持続可能な経営に向けた動きが進んでおり、約3割の森林が木材及び非木材林産物の生産を主目的に指定された一方、森林生態系については愛知目標11(2020年までに陸域の17%以上を保護する)は達成されたようです。今後、特に熱帯地域の開発途上国において森林減少を反転させるための行動が必要です。

下の図は林野庁のHPから抜粋したものです。SDGsと森林の関係が分かりやすく整理されていますので、参考になさってください。