大杉谷

SDGs

大杉谷は三重県にある渓谷で、宮川が流れ、大台ケ原の日出ヶ岳への登山道になっています。日本三大渓谷(黒部峡谷、清津渓谷)の一つとされ、日本の秘境百選の一つにも選ばれており、携帯電話もつながりません。

降雨量が多く年間4,000~6,000㎜に達し、これは屋久島と並んで日本トップクラスです。そのため渓谷には数多くの滝や、嵓(巨巌)があり、七つ釜滝は日本の滝100選に選定されています。登山道も崩壊や土砂崩れが発生し、吊り橋も架け替えているようです。2004年9月の台風21号で登山道が崩壊し、2014年4月に完全復旧するまで約10年間通行止めが一部続いていました。

手付かずの原生林が残り、天然記念物(天然保護区域)、吉野熊野国立公園(特別保護地域)、国設鳥獣保護区(特別保護地域)として保護されています。ユネスコMAB Reserve(生物圏保護区・エコパーク)「大台ケ原・大峯山・大杉谷」にも、2016年に拡張指定されています。

大杉谷の登山道は渓谷に沿った道で、嵓もあり大変困難な道です。1940年に一般登山者を受け入れ始めたそうです。地図上の標高差はありませんが、上り下りが続く登山道を歩くため、谷歩きは平易ではありません。吊り橋や鎖場も多くあります。事故も多く発生しており、大杉谷登山センターや管理者等関係者が登山者へ注意を呼び掛けています。遭難した場合の救難費用は登山者個人負担です。1979年には吊橋が落ちて墜落死亡事故が発生し、訴訟問題になりました。その後環境省(当時庁)は1983年まで通行止めにして本格的に登山道を整備し直しています。

標高300m程度の大杉谷登山口から1695mの日出ヶ岳まで登った場合、渓谷沿いを上り下りしながら標高480mの桃ノ木小屋まで4時間半~5時間で行くことができます。翌日日出ヶ岳まで約1200mのエレベーションを約6時間~7時間かけて登ります。そのルートは険しいため、大台ケ原から下るルートを選ぶ方もいます。

大杉谷や大台ケ原の登山口に行くことも簡単ではありません。シーズンには大台ケ原登山口にバスが一日一本走っており、奈良県吉野町の大和上市駅から約90分かかります。大杉谷登山口にもバスが一日一本走っており、三重県大台町の三瀬谷駅から約90分かかり、予約制です。大杉谷登山口、大台ケ原登山口ともにマイカー駐車場がありますが、停められる台数に限りがあります。

吉野熊野国立公園は、公園全体的にシカの食害がひどいです。大杉谷でも同様で、トウヒやウラジロモミなどを守るために樹木のネット巻きや稚樹保護柵内ササ刈りなど、自然再生事業を行っています。

吉野熊野国立公園は、北山川など昔からダムが建設されてきた国立公園です。ここ大杉谷でも不動谷にダムが建設されており、登山道沿いに水位観測所があります。また宮川ダム施設は公園区域外ですが、宮川ダム湖は公園区域内まで伸びています。1969年頃三重県企業局が大日嵓にも多目的ダムの建設を検討していたようですが、1972年に計画は白紙になったようです。

2021年5月上旬、4人で大杉谷登山口から大台ケ原まで一泊二日で歩いてきました。

1日目

朝7時に和歌山駅を車で出発し、大杉谷登山口(宮川第3発電所)まで約4時間かかり、11時に駐車場着でした。途中大杉谷登山センターのそばを通り、吊り橋を車で越えていきます。すでに秘境感があります。

宮川ダムにかかった吊り橋を車で越える

登山口そばには10台ほど停められる駐車場があり、少し下ったところにも20台ほど停められる駐車場がありました。登山口にはトイレと、Edyがつかえる1分300円の衛星公衆電話がありました。協力金1000円を支払う自動販売機もあり、記念品がもらえます。

トイレと電話と協力金自動販売機

11:40登山開始。宮川第3発電所のそばをぬけ、すぐに大日嵓があり、岩を切った道を越えていきます。嵓とは、山稜の下にある大きな岸壁です。宮川沿いにアップダウンを繰り返して上流に向かいます。鎖場、吊り橋を越え、途中河原で昼食をとり、14:00千尋の滝に到着です。千尋の滝は切り立った崖の上から、まあまあの水量の水が落下しており、米国のキングスキャニオンやヨセミテを思い出させてくれました。

宮川第3発電所の横を抜けて登山が始まる

大日嵓

石を切った道を鎖を頼りに歩く

シシ淵

ポスターなどでも使われるハイライト

シシ淵

ニコニコ滝

再度一時間渓谷を上り下り歩き、15:00ハイライトであるシシ淵に到着しました。切り立った淵の奥にニコニコ滝が見えます。ニコニコ滝は、「名称どうよ」と思いましたが、景色は素晴らしかったです。

15:20シシ淵を出発し、急な岩場を登ります。ニコニコ谷を横に見て山を越えると、平等嵓が見えます。平等嵓もキングスキャニオンやヨセミテ渓谷を思い出させてくれました。

平等嵓

ここまでくればあと40分ほどで桃ノ木小屋

16:20桃ノ木小屋着です。谷あいの立派な山小屋でした。個室(一室追加2000円)やお風呂があり、布団も暖かかったです。食材や資材などは、林業用架線で運んだり、登山道で運んだりするそうです。

石鹸やシャンプーは使えませんが、温かいお風呂につかり、ウイスキーを飲んで一日を振り返り、ビールで乾杯して夕食を摂り、個室で寝ました。20:00消灯です。夜は川の流れと、寝息だけが聞こえる静かな時間を経験できました。

桃ノ木小屋

小屋での夕食

2日目

05:00に起床して準備をし、06:00に朝食を摂り、弁当(1000円)を受け取り、06:20に出発しました。

1名は来た道を下って車を大台ケ原に回し、残り3名は大台ケ原まで登ります。桃ノ木小屋から約30分登ったところに、日本の滝100選に選ばれた七ツ釜滝があります。この七ツ釜滝から堂倉あたりまでの区間は、約10年間通行止めだったそうで、途中の古い看板には、通行止めと記載されていました。光滝、隠滝のそばを大台ケ原に向けて上がります。

七ツ釜滝

日本の滝100選。見えるのは3つ目の滝まで。

吊り橋のすぐそばにある隠滝

堂倉滝は水量が多く、シン淵と並ぶ大杉谷のハイライトの一つ

シャクナゲ坂を登る

堂倉滝を越えると急登が続きます。シャクナゲ坂、シャクナゲ平を、花を見ながら進み、12:50山頂の日出ヶ岳1695m着です。正木峠、大蛇嵓を見学し、大台ケ原駐車場に16:00に到着しました。下って車で回ってきた1名も、大台ケ原駐車場で無事合流できました。1日目は約5時間渓谷を歩き、2日目は約9時間半渓谷を歩き・登り・大台ケ原周遊でした。

途中出会った人は、このコース(大杉谷登山口~日出ヶ岳)を一日で往復しようとしており、実際間に合いそうでした。その人は朝6時に出発し、07:20にシシ淵、08:00桃ノ木谷、11:30ごろには山頂につき、戻ったようです。我々のチームは追い越され、また帰りの彼とすれ違いもしました。とんでもないつわものでした。

八経ヶ岳や大普賢岳をみながら、大台ケ原ドライブウェイを下り、17:20馬酔木で焼肉を食べ、20:00和歌山帰着しました。

大台ケ原ドライブウェイからの大普賢岳

平等嵓吊り橋

美しい新緑

象の鼻を連想させる岩から生え、曲がる杉

多彩な植生

登山道に飛び出した杉の木

宮川には多くの支流が流れ込む

平坦な歩道もある

鎖場で危険な場所もある